ブラジルのサトウキビ酒「カシャーサ」

「カシャーサ(Cachaça)」というお酒をご存知だろうか?

カシャーサはブラジル産のサトウキビの蒸留酒でありラムとは兄弟みたいなもの。 そもそも日本では知名度が低く、どちらかというと「ピンガ(Pinga)」のほうが馴染み深いが、カシャーサとピンガは同意語である。
ちなみにピンガは主にサンパウロ州で親しまれていた呼び名で、カシャーサは現在ブラジル全土での共通語とされている。

すごくマニアックなお酒だと思われがちだが、ブラジル国内では登録されているだけで約35000銘柄、未登録を含めると70000万銘柄以上あると言われている。なぜこれほどの蒸留所はあるのかと言うと、ブラジルではすごく小さな蒸留所が農家みたいにカシャーサを家内生産しているところが多いからである。このことからもカシャーサがブラジルの文化に根付いてきたお酒であることが分かる。

カシャーサの定義

カシャーサには明確な定義(法律)がある。

「カシャーサ」はブラジル国内でブラジル産のサトウキビを使用した蒸留酒のみにしか名付けることができない。現在ブラジル国内でカシャーサという呼び名に統一されてきているのも、この法律が生まれてからである。

  カシャーサの法律

「カシャーサとはブラジルで生産されたサトウキビを原料とし、その搾り汁を発酵させたアルコール度数が38~54度の蒸留酒。
また製品1Lに対して6gまでの加糖したものも含める」(法案:2001年)

カシャーサの製法

サトウキビを圧搾、発酵、蒸留すると言った点ではラムと類似していると言ってよい。

原材料はほぼアグリコール・ラムと同じサトウキビジュースであるが、カシャーサは目的別により、2種類のカテゴリーに分かれる。

一つは「カシャーサ・ヂ・インダストリアル」工業生産カシャーサの意で、主に連続式蒸留機を使用し大量生産を目的としている。もう一つは「カシャーサ・ヂ・アランビッケ」単式蒸留機を使用したカシャーサの意で、最近では「カシャーサ・ヂ・アルティザナウ(芸術的なカシャーサ)」とも呼ばれている。カシャーサの製法でユニークなのは熟成である。カシャーサの熟成にはブラジル国内の特産木を使用した樽が30種類以上あり、樽ごとの個性や特徴により様々な味わいのカシャーサが生まれている。

カシャーサの始まり

カシャーサの歴史はラムと同じく砂糖の歴史に起因する。

1493年、クリストファー・コロンブスによりカナリア諸島からサトウキビの苗がカリブ海に持ち込みまれたことに対し、ポルトガルはマデイラ諸島からサトウキビの苗をブラジルの「サンヴィセンチ(現在のサンパウロ郊外)に持ち込みます。ここからラムとカシャーサの歴史は2分化される。

1500年、ペドロ・アルヴァレス・カブラルという人物がブラジルのポルトセグーロという町に漂着しポルトガル領を宣言。それから32年後に精糖業が開始される。ポルトガル探検隊の隊長マルチン・アフォンソ・ジ・ソウザが現在のサンパウロ州郊外にサンヴィセンテという町を作り、この土地にマデイラ諸島からサトウキビの苗が持ち込まれサトウキビのプランテーションが始まる。カシャーサはその敷地内にある製糖工場で働いていた黒人奴隷によって偶然に発見されたのが始まりだと言われる。どのように発見されたかというと、砂糖生産の過程で、サトウキビの搾り汁を煮立たせた際に、表面にあがってくる泡を放置していました。その泡が自然発酵しアルコールを含んだ液体になり、その液体を奴隷達が口にしたところ気分がよくなったとのこと。その泡は「cagasa/カガッサ」と呼ばれていて「カシャーサ」の語源となったという説がある。

カシャーサのメッカ

カシャーサはブラジル全土で生産されているが、メッカは内陸部にあるブラジル第3の都市ミナス・ジェライス州である。ミナスがメッカであることには歴史的背景も影響しているのだが、土地と気候がサトウキビ栽培に適しているのが大きな理由である。ちなみにミナスでは添加物を一切使用してはいけないという法律もあり質の高いカシャーサを造り続けている。

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